アメット
「どうして、泣く」
「……嬉しいんです」
「そうか」
やっとの思いで発せられた言葉で、シオンはクローリアが胸の中に何を抱え込んでいたのか理解する。これが同じ階級の者同士なら、想いを口に出すことができただろう。しかし二人の階級は天と地に別れ、シオンが望まない限りクローリアは側に居続けることはできない。
だが、今の言葉でクローリアはシオンの側にいていいということになる。涙を流し続けるクローリアに動揺したシオンは、ドライヤーをテーブルの上に乱暴に置くと、慌ててタオルを取りに行く。その間もクローリアは泣き続け、とうとう嗚咽を漏らすまでになってしまう。
「ほら」
「ご、御免なさい」
「いいさ、泣き止んでくれたら」
「……はい」
受け取ったタオルで必死に涙を拭くが、なかなか涙が止まることはない。純粋すぎるからこそ、夢が叶ったことでこのように泣いてしまった。シオンはそんなクローリアの頭を優しく撫でると、使用していたドライヤーを片付ける。その間クローリアは、シオンを視線で追う。
「一緒に寝る?」
「シ、シオン様と!?」
「泣き止まないし」
「泣き……止みます」
「まあ、本当だったんだけどね」
「本当?」
「一緒に寝るってことだよ」
泣き止まないからこそ「一緒に寝る」と、シオンが冗談を言ったのだと思っていたが、どうやら本当に一緒に寝たいと考えていたと、続けられた言葉で判明する。シオンからの誘いにクローリアは顔を赤面させると、頭を振りながら一緒に寝るのは恥ずかしい――と、囁く。
「何もしないよ」
「そ、それでしたら……」
オドオドしながらも、クローリアは控え目に頷く。シオンと一緒にいたい気持ちも勿論だが、今まで彼の寝室に立ち入ったことがなかった。シオンの手招きにクローリアはオズオズとしながら寝室に立ち入ると、徐にそこに何が置かれているのかまじまじと観察してしまう。