アメット

 実際、自分の目で見て内情を知った。

 思った以上に、複雑で厄介と――

「自分の階級を弄ることは、本当はやってはいけない。だけど、弄らないと下部へ行くことができない」

「それでしたら、統治者一族でも……」

「それでは、本音を知ることができない。俺が統治者一族と知れば、その地位の恩恵を欲する」

「パーティーの時のように……」

「そうだ」

 パーティー時の嫌なことを思い出したのか、シオンの身体が微かに震えだす。クローリアは密着しているからこそ、シオンが何を考えているか理解する。地位を隠しているからこそ、見えてくるのが相手の本音。特にA階級の上司は下の階級を見下し、あれこれと命令してくる。

 結果、B階級の者が苦労する。

「嫌……ですか?」

「嫌だったら、とっくに辞めている。辞めて、父さんの跡を継いでいるよ。しかし、今も残っている」

「楽しいですか」

「楽しいよ。下部に来なければ、多くのことを知らないままだった。それにアイにも会えず、勿論クローリアにも」

「私も、シオン様に会えて良かったです」

「有難う」

 クローリアの口から発せられた言葉が余程嬉しかったのだろう、シオンはクローリアの身体をきつく抱き締める。だが、思った以上に腕に力を込めてしまったらしく、呻き声が響く。

「い、痛いです」

「ご、御免」

「あの……シオン様」

「何?」

「枕を……持ってきます」

「いいよ、俺は」

「いえ、私が……」

 シオンが側にいることは嬉しいが、時間の経過と共に羞恥心が増していくのだろう、限界が近い。一緒に寝るのなら枕が別々にしたいのだろう、クローリアはシオンの腕を解くとベッドから下り、駆け足で自室へ向かう。自分の目の前からクローリアが消えたことに、シオンは不満そうにドアを眺めていた。
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