アメット
「それが、心配だった」
「パーティーに参加している方々は……」
「彼等は、私利私欲に塗れている。それを感じ取っているからこそ、参加を拒んでいた……」
「しかし、これで――」
「参加する回数が増えるだろう」
しかしグレイの話では、すぐに養女の手続きを行わないでほしいという。
シオンは統治者一族とはいえ、現在B階級の人間として暮らしている。
その状態で手続きをしてしまえば、クローリアがA階級になってしまい、階級が逆転してしまい雇い主と家政婦の関係が崩れてしまう。
その結果、多くの憶測が生まれてしまう。
それにより、シオンが今の仕事を行えなくなってしまう。
グレイも息子に科学者として頑張ってほしいと考えているので、タイミングを見誤って息子の足枷になってはいけないと考える。
「では、いつが宜しいでしょうか」
「シオンが、跡を継ぐ時がいい」
「畏まりました」
「この話は、他言無用だ」
グレイの命令に、アムルは深々と頭を垂れる。
その表情は明るく、クローリアが自身の養女になることを心の底から喜んでいる雰囲気であった。
◇◆◇◆◇◆
「……わかった」
『では、これで――』
「助かった」
そう言いつつ、シオンは電話を切る。
シオンと会話をしていたのはアムルで、先程のグレイとの話についてシオンに説明を行った。
使用していた携帯電話をポケットに仕舞うと、シオンは昼食の用意をしているクローリアのもとに戻る。
今日は珍しく、仕事が休みだった。
日頃朝早く起きている身分なので、シオンは昼頃まで眠っており、この昼食が今日はじめて口にする食べ物。
甲斐甲斐しく料理をテーブルに並べているクローリアを一瞥すると、シオンは椅子に腰を下ろし彼女が作った料理を眺める。