アメット
「最下層……か」
「行くのが嫌なのか?」
「いや、そういう意味じゃない」
シオンはクローリアと違って、自由に最下層へ行けるわけではない。
今回も何か特別な内容がないと――と考えるが、適切な内容が思い付かない。
アイザックも友を助けようといい内容がないか考えるが、思い付くのは「大気調査」という、以前行ったことを再び行うものであった。
「それしかないか」
「それとも、人口調査とか?」
「人口を調査したところで、上の者は利用しない。何せ最下層は、ドームでは無いとされているのだから」
「なら、大気調査だ」
「後で、意見しないと」
上司に掛け合うのは気が重いことだが、全てはクローリアの為と自分自身に気合を入れる。
クローリアに出会いスッカリ変わった友人に、アイザックは声を上げて笑う。
急に笑われたことに、いつものシオンであったら間髪入れずに反論していたが、自覚しているのだろう黙り込む。
そのことが更にアイザックの笑いを誘うらしく、部屋の中に笑い声が響き渡る。
だが、笑いは長く続かない。
そう、訪問者が現れたのだ。
「騒がしい」
二人の前に現れたのは、同僚。
同僚の登場に、二人は口をつむぐ。
「何かあったのか?」
「別に……」
「変なモノを吸い込んでいないよな」
「勿論」
「なら、いいけど」
「気分転換ってかたちで、アイと話していたんだ。なんというか、根を詰めるストレスが溜まる」
「なるほど」
二人の話に納得したのか、同僚はそれ以上追及してくることはしない。
それに二人は話を行っていた最中も作業の手を止めていたわけではなく、きちんと実験を行っていた。
また、実験の最中に話を行っているのは二人だけではない。
それを知っているからこそ、軽く済ます。