アメット

「手伝いに来た」

「いいのか?」

「時間、掛かるだろう?」

「確かに――」

「その言い方だと、いない方がいいか?」

「いや、そういう意味じゃない。早く仕事を済ませて、何処か食べに行きたい……と、思って」

 シオンの言葉に、同僚は納得すかのように頷く。

 また、予定より遅くなってしまえば他の仕事に差支え、必然的に上司の機嫌も悪くなってしまう。

 だからこのように手伝ってくれるのは有難く、二人は温かく同僚を迎え入れ、共に肩を並べて仕事の続きを行っていった。

 ふと、アイザックが目配せしてくる。

 話は、後で――

 と、言ってくる。

 彼の目配せにシオンは頷くと、黙々と仕事を行う。

 途中、沈黙に耐え切れなくなったのか、三人は他愛ない会話を行う。

 日頃の実験についての話は勿論だが、時折話はおかしな方向へ流れてしまうことも多々あった。

 それでも何とか仕事をこなし、終了する。

 その瞬間、三人は同時に溜息を付いた。




「お疲れ」

「お疲れさん」

「身体が、ガクガクだよ」

「寝ている?」

「少し……な」

「なら俺達を手伝わず、寝た方が……仕事の途中で倒れられた方が、看病とか何倍も大変だ」

 シオンからの心配に、同僚は気まずそうな表情を見せる。

 仕事が立て込んでいるのでそれらそこなさないといけないが、だからといって倒れてしまった元も子もない。

 そう同僚に言い聞かせていると、何か面白いことがあったのかアイザックが横でクスクスと笑いだす。

 アイザックに笑われたことに、シオンは反射的に友人の顔を凝視する。

 シオンからの視線にアイザックは笑いを止めるが、口許が緩んでいる。

 彼に曰く、シオンが身体のあれこれと忠告でいるほど、立派な生活をしているわけではなく、シオンも同じように殆ど寝ていないことが多いという。


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