アメット
「なら、もっと頼むか」
「おい」
「いいじゃないか」
「アイだし……仕方ない」
「太っ腹!」
「だからって、高価な物は止めてほしい。使い過ぎると、クローリアに給料を払えなくなる」
「それは一大事だ」
最初は、高い物を注文してやろうと考えていたアイザックだが、シオンから「クローリア」と聞き、諦める。
安くて、美味しい物。
をメニューを見ながら、探す。
「ミートパイは、いいか?」
「それならいいぞ」
「で、紅茶をもう一杯」
「……仕方ない」
「で、更に――」
「もう、やめろ!」
これ以上注文されると財布に響いてしまうので、シオンは寸前でアイザックの注文を止める。
「腹は減っていない」と言っていたが、何品も注文されると本当は腹が減っているのではないかと予想する。
その点を追及すると「一応、腹半分くらい空いている」と言い、笑いだす。
「油断できない」
「もっと食べたい場合は、自分で注文する。流石に、シオンの財布を当てにしてはいられない」
「そうしてほしいよ」
肩を竦めつつ嘆息すると、シオンは紅茶を一口口に含む。
アイザックはウエイトレスを呼び寄せると、紅茶のおかわりとミートパイを注文していく。
シオンは友人の注文風景を静かに眺めていたが、ミートパイが気になりだしたのだろう、同じ物が欲しいとウエイトレスに頼む。
「どうした?」
「食べたくなった」
美味しい物が食べたくなったというのは、素直な反応。
それに目の前で食べている人がいるのに、紅茶一杯で過ごせるほどシオンは強い方ではない。
だから同じ物を注文したと話すと、その意見に同意できるらしく「わかる、わかる」と言い、アイザックは何度も頷き返す。