アメット
その時、シオンとアイザックの携帯電話が同時に鳴りだす。
突然響き渡った音に、食事をしていた客の注目を浴びる。
二人は申し訳なさそうに頭を垂れると、携帯電話を取出し電話に出た。
どうした?
それが、二人の第一声。
電話の相手は同僚で、何かがあったのか戻って来いというものであった。
それに対し二人は、これまた同時に「どうして?」と、聞き返す。
すると何か事件が発生したのか、電話口から甲高い悲鳴が響く。
それに続くように複数の足音と、切羽詰まるような声音が合わさる。
「悲鳴!?」
『手が足りないんだ』
「わ、わかった」
今の悲鳴からとんでもないことが発生したと理解した二人は、互いの引き攣る顔を見合わす。
注文したミートパイが気になるが、それ以上に同僚の身が心配。
二人は席から腰を上げると会計へ向かうが、その途中でミートパイ二人前を運んでいるウエイトレスとすれ違う。
「お、お客様!」
「それ、テイクアウトできる?」
「で、できます」
「じゃあ、それ持って帰る」
「わ、わかりました」
二人の表情から何かを悟ったのだろう、ウエイトレスはミートパイを包みに奥へ向かった。
会計後、箱に入れられたミートパイを持ち、二人は研究所へ急ぐ。
研究所で待っていたのは植物の異常成長というべきか、信じ難い光景に唖然となってしまう。
アイザックは近くを走っていた同僚を捕まえると、どうしてこのようなことになってしまったのか問い質す。
「成長を速めた結果だ」
「生産速度向上の失敗か」
「そう」
「その結果が……これ」
「ここまでになると、危なくて育てられないね」
研究している植物を育てるのは科学者ではなく、一般人。
その一般人が安全に育てられ、尚且つ高い生産性を望める――という下で研究を行っていたが、この状況を見ていると危なくて育てることができない。
処分し最初から研究のやり直しになってしまうが、これは仕方ないと諦める。