アメット
案内してくれるのなら、異性でも同性でもどちらでもいい。
ただ活発な性格より、どちらかといえば大人しい性格の方をシオンは願う。
また年齢も関係ないのだが、できるものならセルゲイのような人物ではない方がいい。
と、あれこれと案内者に対し心の中で願望を語る。
数分後――
セルゲイとエイネールが語っていた、案内者が姿を現した。
予想通り性別は女で、見た目の年齢は十代後半。
胸元まで伸ばされた茶色の髪はあまり手入れをしていない印象を受け、提供される物資が少ないのだろう、纏っているワンピースは薄汚れ黒いスカートは裾が解れている。
防護マスクを身に付けている見慣れない人物に、相手は何処か緊張を隠せないでいた。
正直すぎる反応にセルゲイは苦笑すると、シオンの名前と何故最下層にいるのか彼女に説明していく。
すると自分より階級が上とわかった途端、彼女はシオンに向け深々と頭を垂れた。
「ああ、いいって」
「で、ですが……」
「頭を下げられるのって、慣れていないから」
「そ、そうなのですか」
階級が上だというのに、下げられることが慣れていない。
シオンの信じられない言動に彼女はセルゲイの顔に視線を合わすと、どうすればいいのかわからないので助けて欲しいと雰囲気で訴える。
彼女の訴えを感じ取ったのだろう、セルゲイはこの階層を案内するように言う。
「あの方を?」
「ああ、持って来た地図が役に立たないようだ。で、仕事にならない。だから、案内してやって欲しい」
「お店は?」
「そのことは大丈夫よ。こうやって夫も帰って来たのだから、彼に手伝わせればいいのだから」
「お、おい」
妻の衝撃的な言葉に動揺を隠せないセルゲイに、エイネールは面白そうに笑い出す。
主人夫婦の心遣いに少女は申し出を引き受けると、シオンに向かい一礼し自分は「クローリア」だと名乗る。
それに対しシオンは軽く頷き返すと、クローリアを暫く借りるとセルゲイとエイネールに伝えた。
クローリアという案内を得たことにより、上司から与えられた地図がどのように間違っているのか判明する。
間違いは半分というより大幅という言葉が似合い、完全に別の場所の地図といっていいもので、仕方なくシオンは地図を修正しつつ調査も同時に行うことにした。