アメット
シオンは肺に溜まった空気を全て吐き出すかのように溜息を付くと、さっさと洗浄をはじめ苦しい状況から解放して欲しいと頼む。
その必死すぎる頼み方に全員が一斉に笑い出すと、彼等は最下層から戻ったシオンの洗浄を行なう為に特別な防護服で彼の身体を包むのだった。
◇◆◇◆◇◆
「お疲れ」
「……有難う」
「暗い」
「調査を行うより、洗浄の方に疲れた。外界へ赴いた時以上に、長い時間やらされたからな」
「それは、仕方ないさ」
「未開の地か?」
「あの場所は、そのように捉えられてもおかしくはないよ。外界より、訪ねる者はいないのだから」
洗浄を終えたシオンはアイザックを掴まえると、自分の身に起こった出来事の一部始終を話していく。
諦めの中で行った洗浄であったがやはり慣れないものであるので、不平不満は募っていく。
結果、語る言葉には愚痴が混じり、それを聞くアイザックは顔を引き攣らせる。
「しかし今回は、お前が最下層に行って正解だったと周囲は言っている。特に、上の者が……」
「何故?」
「優秀?」
「冗談」
「いや、現に多くの情報を集めてきた。これについては、上の者も驚いていたらしい。それに最下層の地図だっけ、更新してきたじゃないか。これについては、全くの予想外だった」
「あれは、ついでだよ」
「だからといって、更新してくる奴はいない。大体が、調査だけしてとっとと帰還する。誰も、あんな場所に長居したいとは思わない。特に新鮮な空気の中で暮らしていると、尚更」
確かに、アイザックの言い分は正しい。
シオンもクローリアに出会っていなければ、適当に大気調査を済ませて帰還を予定していた。
しかしこれこそ予想外の出会いといえよう、クローリアの存在は今もシオンの心に引っ掛かっており、あの後どうしているのか気になる。