アメット
「これ?」
「あー、もっと詳しいやつ」
「じゃあ、これでいいかな」
次々と表示されていくデータを眺めつつ、データを欲する男は目的のモノを探す。
するといい情報が見付かったのか、そのデータが表示された画面を指し示すとこれが欲しいと頼む。
「いいよ」
「助かる」
「使い道は?」
「新しい浄化システムの構築に使用する。前回は、見事に失敗したからな。関わった奴らは、ガッカリしている」
「濃度上昇の手助け……とまではいかないが、調べたら変わっていなかった。でも、無駄骨ではないよ」
「心配は成功の何とか……か」
「それそれ」
「次は、流石に成功して欲しい。さて、新システム構築を行なうか。お前も頑張れ、シオン」
「ああ」
「で、俺も頑張る」
「期待している」
シオンと呼ばれた男は軽い口調でそう返事を返すと、自分の目の前に表示されているホログラムの画面を相手がいる方向に向かってスライドさせる。
データを欲した男はそれを器用に片手で止めると、自分が使用しているパソコンにシオンから貰ったデータを保存する。
新システム構築が気になるのか横目で相手の作業を眺めていたシオンであったが、報告書の提出が遅れた場合、一部の上司からどやされることを思い出し他人に構っていられないことに気付く。
シオンは、報告書を仕上げるにあたって必要のないデータが表示されている画面を次々と消していくと、先程と同じ素早い動きでキーボードを打ち上司が満足する報告書を仕上げていった。
シオンが報告書の大半を仕上げ終えたちょうどその頃、研究室の自動ドアが開く音が響いた。
その音にキーボードを打つ手を休めると、現在の時刻を確認する。
15時――その時刻は一般的に「おやつ」の時間とされているが、科学者が暢気におやつの時間を楽しむ余裕は無い。