アメット
「で、対策は?」
「期待しない方がいい」
「……そうか」
「上部の者が調査に行った……ということで、役割を終えたと思っている。データの解析も、怪しいところだ」
「抹消か?」
「流石に、そこまではしないだろう。誰も行きたがらない最下層のデータを手に入れたんだ、別の用途で使われるかもしれない。あれはあれで結構重要なデータで、外界の状況と照らし合わせる」
「そうしてくれないと、行った方が報われない。何らかのかたちで、活用してくれればいいが……」
しかしこれは淡い期待であって、本当に期待してはいけない。
上の者の性格と日頃の行動を総合すると、馬鹿正直に期待していると手痛いしっぺ返しに合う。
アイザックが言っていることが正しいと思える状況に、シオンは激しい疲労感に襲われ溜息しか漏れなかった。
「何か飲むか?」
「奢ってくれるのか?」
「いいぞ」
「有難う……って、何か裏が……」
「何もない」
「本当か?」
「ほ、本当だ」
やはり何か裏があったのだろう、アイザックの声音が微かに震えている。
わかり易い反応にシオンは不信感たっぷりの視線を向けつつ、裏がないと言いながらどうして声音が震えているのか尋ねる。
痛いところを突かれたことに動揺を隠せないアイザックは、抵抗を見せずに陥落した。
「最下層の話をもっと……」
「それならそうと言えばいい」
「あまり話したいって雰囲気じゃないから」
「話してもいい部分と、悪い部分がある。いや、言ったように住人はいい連中が多かったよ。ただ、文明水準でいえばかなり遅れている。古い物を再利用して使用し、建物もボロボロだ」
その中でシオンが驚いたのは、そのような環境にあってもネット設備が整えられていることだった。
それについてアイザックも驚きを隠せず、それを使用して上部に連絡を取ったのかと納得する。
それと彼も知らなかったのは、ドームの中で出されているゴミの最終地点。