アメット
これが、当たり前。
これが、ドームの内情。
想像以上の現状に、二人は言葉を続けられないでいた。
そして同時に長い溜息を付くと、重苦しい空気を払拭しようと別の話に切り替えることにする。
先程とは違い今度はシオンが質問を行なう番で、出迎えの時にアイザックがどのような仕事をしていたのか尋ねていた。
「植物の調査だ」
「外界のか?」
「いや、ドーム内で栽培されている奴だ」
「それは、別の奴等が……」
「一部が、汚染されたらしい」
「マジか?」
「だから、こっちに回ってきた」
アイザックの説明に納得する部分があったのだろう、シオンは肩を竦めていた。
彼のわかり易い態度と意見に同調してくれたことに感謝すると、仕事を増やして欲しくないと本音を漏らす。
それに対しても納得する部分があったのだろう、何度も頷いて「管理が甘い」と、言い放つ。
「だな」
そう返事を返した後、アイザックは腰掛けていた椅子から立ち上がる。
そして自動販売機の前に行くと、何が飲みたいのか尋ねる。
シオンが注文したのは、砂糖たっぷりのコーヒー。
肉体と精神の両方に疲労感があるので、甘い飲み物で身体を休めたいということらしい。
アイザックはシオンの飲み物を先に購入しテーブルの上に置くと、次に自分用の飲み物を購入しようとする。
だが、なかなか飲み物が決まらないのか、首を傾げながら表示メニューを眺める。
彼の欠点の中に優柔不断は含まれていないが、今日の彼はどこかおかしかった。
「どうした?」
「同じのにしようか、迷っている」
「別にいいんじゃないか」
「いや、新発売の飲み物があるんだ」
「どういうやつだ?」
「果物の果汁入りだ」
それを聞いても、シオンの反応はいまいち悪い。
果物の果汁入りの飲み物は、以前から普通に売られている。
目新しいものではないのに、どうしてアイザックが食い付いているのか。
その点を詳しく聞きだすと、友人が食い付いた理由がわかる。
何とそれは、果汁50パーセントの飲み物だった。