アメット
今度は、どの一族が統治するのか――
しかしこれに関係してくるのは、A階級の人間。
統治者におべっかを使い、自分の地位を揺ぎ無いものにしようとする。
噂では統治者に貢物をしている者もいるらしいが、あくまでも噂なので真相は定かではない。
だが、上司の性格を考えると、強ち間違いとも言えない。
「確か、今度はセレイド家の番か」
「知っているのか?」
「そういう話を聞いた」
「評判のいい一族なのか? この階級にいると、いまいちそういうことに実感がないというか……」
「上の話を聞いていると、他の二つの一族に比べると評判がいいらしい。特に、科学者相手には」
「なんだそれ」
立ち話を耳にした程度なので、詳しい部分まではわからなかったらしいが、研究所で働いている者達にしてみれば評判はいい方という。
特にプロジェクトの成功を心待ちにしており、科学者を大切にしてくれる一族ということらしい。
それを聞いたシオンは一言「いいじゃないか」と、返す。
それに対し、相手も頷き返す。統治者一族に期待されているというのなら、頑張って成功させないといけない。
だからといって解決方法が見付からず、いい手段も思い付かないのが現状。
期待を裏切らず、日々の努力を続ける――というのが、彼等にできる最善の手段だった。
「統治者って、どういう人物だろう」
「わからない」
「現在の階級では、無理か」
「全くわからない人物に、ドームを統治されているのか。シオンは、どういう人物だと思っている」
「いい人ならいいけど」
「もしもの話だが、本当に統治者っているのか……まさか、正体はコンピューターってことは……」
「考えすぎ」
「だよな。コンピューターに人間が統治されているって洒落にならないし、いい気分じゃない」
馬鹿馬鹿しい言い方に笑い出すと、それに釣られるかたちでシオンも笑い出す。
だが心の何処かに「本当に、コンピューターに」と思う部分が互いの意識に存在していたのか、途中で笑いが止まる。
それでもやっぱり有り得ないと判断したのだろう、シオンが話題を変える。