アメット

 今度は、どの一族が統治するのか――

 しかしこれに関係してくるのは、A階級の人間。

 統治者におべっかを使い、自分の地位を揺ぎ無いものにしようとする。

 噂では統治者に貢物をしている者もいるらしいが、あくまでも噂なので真相は定かではない。

 だが、上司の性格を考えると、強ち間違いとも言えない。

「確か、今度はセレイド家の番か」

「知っているのか?」

「そういう話を聞いた」

「評判のいい一族なのか? この階級にいると、いまいちそういうことに実感がないというか……」

「上の話を聞いていると、他の二つの一族に比べると評判がいいらしい。特に、科学者相手には」

「なんだそれ」

 立ち話を耳にした程度なので、詳しい部分まではわからなかったらしいが、研究所で働いている者達にしてみれば評判はいい方という。

 特にプロジェクトの成功を心待ちにしており、科学者を大切にしてくれる一族ということらしい。

 それを聞いたシオンは一言「いいじゃないか」と、返す。

 それに対し、相手も頷き返す。統治者一族に期待されているというのなら、頑張って成功させないといけない。

 だからといって解決方法が見付からず、いい手段も思い付かないのが現状。

 期待を裏切らず、日々の努力を続ける――というのが、彼等にできる最善の手段だった。

「統治者って、どういう人物だろう」

「わからない」

「現在の階級では、無理か」

「全くわからない人物に、ドームを統治されているのか。シオンは、どういう人物だと思っている」

「いい人ならいいけど」

「もしもの話だが、本当に統治者っているのか……まさか、正体はコンピューターってことは……」

「考えすぎ」

「だよな。コンピューターに人間が統治されているって洒落にならないし、いい気分じゃない」

 馬鹿馬鹿しい言い方に笑い出すと、それに釣られるかたちでシオンも笑い出す。

 だが心の何処かに「本当に、コンピューターに」と思う部分が互いの意識に存在していたのか、途中で笑いが止まる。

 それでもやっぱり有り得ないと判断したのだろう、シオンが話題を変える。

< 80 / 298 >

この作品をシェア

pagetop