アメット
ドームの上部や下部へ行くには、特別な許可を得て中心部に設置されているエレベーターを使用しないといけない。
しかしドームの構造の中には、一部の人間にしか知られていない装置や機能が多く存在する。
そのひとつが、シオンとアムルが消えた闇の中に存在する物といっていい。
二人が行き着いた先にあるのは無機質なドームの外壁だったが、アルムがその一部分に触れると外壁の中から機械が出現し、ホログラム形の入力装置が投影される。
アムルは手馴れた手付きで何かの暗号を入力していくと、プシュっと音と共にひとつの扉が目の前に現れた。
「どうぞ」
「有難う」
出現させたのは、エレベーターだった。
本来、ドームのエレベーターはひとつだが、隠された場所に存在するもうひとつのエレベーター。
勿論、一部の者しか知られていないように、使用できる人物も限られている。
そして、利用者は上部や下部へ行くのに許可はいらない。
ドアが閉じられると同時に、アムルが入力に用いていた機械が自動的に外壁の中に仕舞われる。
これにより、この場所に特別なエレベーターが存在していることがわからず、ただ冷たい外壁だけが真実を知る。
また、特別な物が存在するということも噂として上がらない。
「視力が、下がられましたか?」
「いや、これは伊達だよ」
「やはり、そうしないと……」
「多分、大丈夫。だけど、研究所にはA階級の人間がいるから……油断はできない。だから、伊達眼鏡」
「そうでしたか。旦那様も、そのあたりを心配しておりました。シオン様は、旦那様の後を……」
「わかっている。わかっているからこそ、今回は参加することを選んだ。他の時は、嫌だけど」
「何か、問題でも?」
「まあ、色々と」
「何かあると申すのでしたら、私から旦那様に……」
「それについては、直接俺が言うよ。愚痴のようなものも、混じってしまうかもしれないから」
言い難いことなのだろう、シオンは言葉を濁す。
正直に言うと、面倒というより集まってくる者に辟易しているといっていい。
B階級の人間と大きく違う彼等は独特の人物といっていいもので、彼等は高いプライドを有している。
そして口を開けば、自分を過大評価する。