アメット

 それに嫌気が差すのでシオンは彼等に会うことを拒否し、呼び出しを拒み続けてきた。

 しかし愚痴ったところで彼等の性格が改善されるわけがなく、それどころか悪化するかもしれない。

 またアムルに迷惑を掛けてはいけないと、愚痴を言うのなら父親にすると言った。

 勿論、アムルもシオンの性格を知っている。

 知っているからこそ、これについて自分の意見を言うことはしない。

 ただシオンの後方に従え、エレベーターが目的の場所へ到着するのを待つ。

 一体、どれくらいの距離を昇っているのか――長い時間を掛けて、エレベーターが上昇し続ける。

 すると目的の場所へ到着したことを知らせる音声が流れ、続いて扉が開く。

 シオンの目の前に広がっている光景は、明らかにドーム内の雰囲気とは違う。

 特殊硝子に覆われた先に広がっているのは、漆黒の闇。

 いや、漆黒で覆い尽くされているのではなく、宝石を散らしたかのような無数の煌く点が存在する。

 そう、今シオンがいるのは宇宙空間だ。

 エレベーターを降り、シオンは眼下を見る。

 足下に存在するのは、薄汚れた惑星。

 かつては「青い惑星」と呼ばれ美しかったが、今は見るも無残な姿を晒している。

 そしてこの中で多くの人間が生活を送り、例のプロジェクトを立ち上げた。

 再び、青い惑星を取り戻す為に――

「旦那様が、お待ちです」

「……ああ、わかった」

 アムルの案内で、シオンの父親が待つ部屋へ向かう。

 その途中、複数の使用人とすれ違い、誰もが恭しく頭を垂れてくる。

 彼等の態度で実感する、自分が置かれている立場。

 それに、どのような血を引いているのか。

 だがシオンは一切表情に出さず、黙々と歩き続けた。


◇◆◇◆◇◆


「お連れしました」

「ご苦労。これで、下がっていい」

 シオンの父親の言葉にアムルは深々と頭を垂れると、二人の前から姿を消す。

 アムルが立ち去ったのを確認すると、シオンは椅子に腰掛け休んでいる自身の父親のもとへ歩み寄る。

 父親の名前は、グレイ・セレイド。そう、三つある統治者一族〈セレイド家〉の当主だ。

 そしてシオンは、最下層で自分のファミリーネームを〈バイハーム〉と名乗ったがこれは偽りで、本当の名前はシオン・セレイド。

 いずれ父親の後を継ぎ、セレイドの当主とならないといけない人物。

 また統治者として、多くの者を導いていかないといけない役割を持つ。


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