アメット

「ただいま」

「今回は、すまない」

「父さんは、謝らなくていいよ。本当は、俺が……仕事が忙しいと理由をつけ、避けてきた」

「理由は、わからなくもない」

 息子の心情を見抜いているかのような言い方に、シオンの心臓が一度力強く鼓動し目を見開く。

 流石、今まで統治者として多くの者を導いているだけあって、グレイの洞察力は高い。

 それに五十年以上生きている経験も相俟って、息子の考えなど簡単に見抜くことができた。

 絶句している息子の表情にグレイは苦笑すると「やはり、そうか」と言い、これについて特に追求することはしなかった。

 それどころか、シオンが帰宅してくれたことを素直に喜ぶ。

 また久し振りに見た息子の成長振りが嬉しいのか、グレイは柔和な表情を浮かべている。

「仕事は?」

「プロジェクトの進みは、あまりいい方じゃないよ。データは集まっているけど、他の部分で……」

「上の者か」

「言い辛いけど……うん」

「そうか。プロジェクトが進んでいることを期待していたが、まだドームの中で暮らさないといけないのか」

「父さんに、目を掛けて貰っているのに」

「統治期間は、四年。それ以外の八年は、別の一族が統治している。彼等にとって、プロジェクトの成功はどうでもいいものなのだろう。ドームで暮らす者達を宇宙から見下し……」

 グレイが語る言葉に心が強く鷲掴みにされたのだろう、シオンは居た堪れない表情を作る。

 統治者は他の者達のようにドームで暮らしているわけではなく、宇宙空間に浮かんでいるコロニーで生活している。

 その中で最高の生活を送り、グレイが語るように惑星を見下す。

 汚れた場所から離れて暮らし日々足下に惑星を見ているので、感覚が狂ってしまったのだろう。

 他の二つの一族はドームで暮らしている者達を下げすさみ、自分達が豊かに暮らすことができればいいと考えている。

 だからプロジェクトに見向きもせず、手を貸すこともしない。

 いや、正しくは成功しては困るのだろう。

 大気が浄化されドームの外で暮らせるようになったら、自分達の影響力が薄まってしまうかもしれない。

 だからドームという隔離された場所に多くの人間を閉じ込め、自分達の権力が永遠に続くように策略を日々練り続けている。


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