アメット
それでは人類の成長に繋がらないとグレイはドームの外に出ることを望むが、その前にやらなければいけないのが外界の浄化。
だからこそ、プロジェクトを推し進めている科学者に協力し、息子にも頑張って欲しいと考えている。
しかし現実は、思った以上に複雑といっていい。
「私が統治している間、少しでもいいプロジェクトが前進すればいいが……シオン、期待している」
「父さんに期待していると言われても、俺は下っ端。現在は、B階級の人間として生活しているし」
「……そうだったな」
統治者一族の地位を隠してまで、B階級の人間として生きているシオン。
その主な理由は科学に興味があったということと、父親の願いも関係している。
だからこそ生体データを弄くり、ファミリーネームを偽る。
そして上司に不満を持ちつつも、科学者として仕事を行う。
だが、統治者一族として戻った今、偽りのファミリーネームは使えない。
これから、セレイド家がドームを統治していく宣言が行われ、祝いのパーティーが開かれる。
他の一族が統治している時はシオンが参加しなくても問題はなかったが、流石に今回は参加しないといけない。
しかしグレイは息子の心情を理解しているので、少し顔を見せたら奥へ下がっていいという。
予想外の父親の言葉にシオンは本当にそれをしていいのか尋ねると、無理をして不機嫌は表情を作られるより何倍もいいらしい。
それにグレイ自身、パーティーの参加者の性格を熟知している。
「お前は、狙われる」
「……仕方ないよ」
「誰か、いい相手はいないのか?」
「いない」
「即答だな」
「態と、目立たないようにしているから。あの姿で好意を持ってくれる人は、いないよ。友人はいるけど」
息子の言葉に、グレイは苦笑する。
といって、いつまでも独身でいるわけにはいかない。
いずれ誰かと結婚し、統治者の地位を継がないといけない。
特にシオンは結婚適齢期と呼ばれる年齢なので、彼が受け継ぐ権力を目当てに多くの異性が群がり自分をアピールしていく。
それが鬱陶しく嫌っているからこそ、パーティーに参加するのを嫌う。
それを知っているからこそグレイは息子にあのようなことを言い、気分を害さないように気配る。
父親の気遣いにシオンは素直に礼を言うが、グレイは頭を振るだけ。
そして「早く、いい相手を見付けろ」と、言った。