アメット
それでも彼女達はそわそわし続け、視線をシオンに向け自分の存在を伝える。
彼女達の視線にシオンは態と視線を合わせないようにして、父親の言葉に耳を傾ける。
グレイが語っているのは、統治者としての抱負。
特にプロジェクトの成功を願う気持ちは、とても強かった。
グレイの熱弁に対し拍手が送られるが、果たしてどれだけが本心か――明らかに社交的な立場で拍手を送る者も目立ち、大半の者がプロジェクトの成功を願ってはいない。
そのことをグレイも知っているのだろう、送られる拍手に対し、軽く手を上げるが何処か素っ気無い。
「覚えておけ」
「何を?」
「奴等の本心だ」
「先程の拍手?」
「見たか」
「いい加減だね。とてもわかり易くて、表情は隠していても拍手の仕方でわかってしまうよ」
「それがわかればいい」
小声で囁き合うのは、参加者が見せた反応。
統治者は三つの一族が交互で行なっているが、参加者にしてみれば〈セレスト家〉が、扱い難い。
彼等にしてみればグレイは曲者と認識し、裏工作が効かない厄介な相手と考えている。
だから、あのような反応をわかり易く見せる。
それは男達の反応で、逆に女達の反応は異なる。
容姿端麗のシオンに群がり、彼に気に入られようと努力する。
男と女で違った面を見せるが、根本的な部分では一緒。
誰も逆らうことのできない権力に魅力を感じ、それを手に入れようとなりふり構わず必死になるのだから。
グレイの話が終了すると同時に、複数の女がシオンのもとに群がってくる。
彼女達にすればこの時間を待っていたとばかりに、必死に自分を売り込みだす。
この状況を嫌うシオンにとって迫ってくる女達は不機嫌の対象になるが、自身の気持ちを表情に出すことはできない。
作り笑いをし、何とか彼女達の言葉を上手く交わしていくが、絶対に獲物を獲得したいと思っているらしくグイグイと迫ってくる。
また、自身を美しく見せようと時間を掛けて化粧を施したのか、群がってくる者達の中に化粧が濃い者もおり、何より香水が鼻を刺激する。
彼女達が次々と口にするのは、今までどうしてパーティーに参加しなかったというもの。
シオンが参加しなかったので寂しかったと瞳を潤ませながら言うが、そのやり方があざとく見えてしまう。
中には十代前半の女性が行ったら可愛い仕草をする者もおり、シオンの精神を痛める。