13年目のやさしい願い


「なんで、ハルが謝んの?」

「すごく……心配したから」

「……うん。だから、ごめんって」

「違うの」



ハルは困ったように、小さく首を傾げた。



ハルは思ったことを口にしない。

……ことが、多い。

考えたことを口にする前に、とてもしっかり頭の中で吟味する。

そして、言わなくてもいいと思った言葉は、すべて飲み込んでしまう。



だけど今、必死に言葉を探して、ハルは何かを言おうとしていた。



「きっと、わたし……」

「うん」

「いつも、わたしがカナに、心配かけてるでしょう?」



「……ああ」



なるほど。

だから、「ごめんね」か。



ハルが言いたいことが瞬時に理解できて、

そして、そう言ったハルがあまりに愛しくて、

気がつくと、オレは満面の笑みを浮かべていた。

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