13年目のやさしい願い


   ☆   ☆   ☆


「……ったく、心配させやがって」


オレの事故の知らせを聞いて駆けつけてくれた兄貴は、呆れたようにボヤく。

お袋も親父も遠方に出かけていて、まだ戻って来ないらしい。



「交通事故に巻き込まれて、意識不明だなんて言うから、用事を放り出して飛んできたら、ぜんぜん元気で、その上、まあイチャイチャと……」



と、ここで兄貴は理性を取り戻したらしい。

ハルの存在に気がついて、その先を続けるのをやめた。

急に笑顔を浮かべて、



「……まあ、無事、意識が戻って良かったよ、ホント。ね、ハルちゃん?」

「は、はいっ」



ハルは真っ赤な顔で、困ったように兄貴の顔を見上げた。



「心配かけてごめん」



オレが言うと、兄貴は、



「いや。元気そうで何よりだ」



と笑った。
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