13年目のやさしい願い
兄貴のポケットで、スマートフォンがブルブルと震えた。
「悪いね、病室で」
兄貴はスマホを耳に当て、それから、行儀悪く一つ舌打ちをした。
「今ごろ留守電入ってきても、遅いよな?
叶太の意識が戻って、心配ないから慌てなくていい……だと」
「ごめんね。……ママよね、電話」
「ああ……っと。別に、おばさんが悪いわけじゃないって! 携帯会社ね、問題は」
と、兄貴が慌ててフォローに入る。
オレが相手だったら、「そうだ。おまえが悪いんだ」くらいに、からかわれるんだろうけど、やっぱり兄貴もハルには優しい。
「えーっと、じゃあ、オレ、ナースステーションでも行って、入院準備のこととか聞いてくるわ。
そんで、荷物持ってまた来るから」
「悪い」
「いや。……じゃ、後は水入らずでっ!」
兄貴は笑いながらそう言うと、ハルの頭にポンと手をのせた。
ハルは困ったような顔をしながら頬を赤く染めた。