13年目のやさしい願い
わたしはカナの枕元のイスに座って、
カナの手を握りしめていた。
何だか、とても疲れていて身体が重い。
パパとカナの会話が、頭の上を素通りしていくような気がした。
「……菜、……陽菜。帰るぞ」
パパがわたしの肩に手を置いた。
「帰らない」
「陽菜」
「まだ、いるもん」
「ハル、オレ、明日には帰れるから」
「やだ」
「陽菜」
パパは厳しい声で言ったけど、わたしの目から涙がこぼれ落ちるのを見て、
「ああ。分かった分かった。……後から、また迎えに来るから、」
と、慌てて言った。
ごめんね。
わたしに甘いパパが、わたしの涙を見て、わたしの願いを叶えないわけないって知ってる。
でも、わざとじゃない。
昨日から、わたしの涙腺は壊れたままだった。