13年目のやさしい願い


   ☆   ☆   ☆


「絵本、好き?」



大部屋の中から聞こえる子どもたちの笑い声。

絵本を読む、優しくて綺麗な声。

明るくて楽しそうな空気。

ベッドの数以上に集まっていた子どもたち。



解放されたドアから、中の様子を覗いていたら声をかけられた。

背の高いお兄さん。

いったい、誰なんだろうと小首を傾げると、お兄さんはにっこり笑って、もう一度聞いてくれた。



「絵本、好き?」

「うん」



答えると、



「じゃあ、中で聞くといい」



お兄さんは優しく笑って、大きな手のひらをわたしの頭にポンと置いて、

それから、わたしの手を引いて大部屋の中に入れてくれた。



おずおずと部屋に入るわたしに気づいて、絵本を読むお姉さんは、にこっと笑いかけてくれた。
< 126 / 423 >

この作品をシェア

pagetop