13年目のやさしい願い
☆ ☆ ☆
「絵本、好き?」
大部屋の中から聞こえる子どもたちの笑い声。
絵本を読む、優しくて綺麗な声。
明るくて楽しそうな空気。
ベッドの数以上に集まっていた子どもたち。
解放されたドアから、中の様子を覗いていたら声をかけられた。
背の高いお兄さん。
いったい、誰なんだろうと小首を傾げると、お兄さんはにっこり笑って、もう一度聞いてくれた。
「絵本、好き?」
「うん」
答えると、
「じゃあ、中で聞くといい」
お兄さんは優しく笑って、大きな手のひらをわたしの頭にポンと置いて、
それから、わたしの手を引いて大部屋の中に入れてくれた。
おずおずと部屋に入るわたしに気づいて、絵本を読むお姉さんは、にこっと笑いかけてくれた。