13年目のやさしい願い
「陽菜ちゃん、少し診ようか」
「え? 裕也さん、できるの?」
「おいおい。まがりなりにも医者だよ。診察できなくてどうする?」
コツンと頭を叩かれ、肩をすくめて、ごめんと謝る。
聴診器をじっくり場所を変えて、何度も当てて、それから脈を診て、裕也さんは難しい顔をした。
ハルはやっぱり、まるで目を覚まさない。
ハルの服を戻し終えると、裕也さんはオレに向き直った。
「叶太」
「なに?」
「陽菜ちゃん、相当調子悪いぞ」
「……うん」
「昨日、今日でどうこうってより、カルテ……昨日の検査結果とか見ても、あんまり良くない」
「……うん」
新学期早々の事件発覚以来、ハルは元気がなかった。
ただ落ち込んでただけじゃなくて、体調も良くないのは感じていた。