13年目のやさしい願い
2.はじめての怒り
くっそー!!
ハルのバカタレ。
……あ。
もしかしたら、オレは今、生まれて初めて、ハルのことを悪く思ったかもしれない。
そんな自分を少し後悔した。
ハルがああいう子だってのは、よーく分かってたんだ。
ハルはあんなに、か細くて弱々しく見えるのに、実はけっこうしっかりしている。
幼なじみ時代に終止符を打って、恋人になった今だって、オレに甘えたり頼ったりなんてしないんだ。
そうして、公平で生真面目。
悪く言えば融通が利かない。
自分が折れれば済むことなら、平気でいくらでも譲ってくれるから、そんな頑固なハルを知ってるヤツは、ほとんどいないだろうけど。
そう。
こうなるのは分かってたんだ。
もしバレたら、ハルがオレの不正を見逃すはずはないって。
……分かっていたから、ずっと隠し通していたのに。
「腐れ縁だな」って言うオレの言葉を信じて疑いもしないようなハルだったのに。
くそったれっ!
オレは、ハルにこのことをバラしたヤツの顔を思い出して、奥歯を噛みしめた。
去年、そのせいで、オレとハルの関係はこじれにこじれて、ハルは危うく死にかけた。
それがきっかけで、晴れてハルの恋人になれたのだけど、だからといって、とうてい許せるモノではない。
くそうっ!
どうしろってんだっ、まったく!