13年目のやさしい願い


田尻さんは、本当に、とても、はっきりものを言う人だった。



誰も触らない、触れようとしない話題に、平気で手を伸ばして来るんだもの。

驚いてしまう。

でも、それが妙に心地良かった。



突然、飛び出した思いもかけない質問に、



「怖くないよ」



と、ほほ笑みを浮かべて答えると、彼女は不思議そうな顔をした。



「なんで?」



何でもストレートに聞いてくるけど、答えたくなかったら、素直に、そう言えば、彼女は気にしないと知った。



田尻さんのおかげで、

思ったことを言っても大丈夫なのだと、知ることもできた。

だからと言って、思ったことを何でも口にするなんて、やっぱり、わたしにはできないのだけど。

< 169 / 423 >

この作品をシェア

pagetop