13年目のやさしい願い


だけど、わたしの心の奥底に、ズカズカと踏み込んでくる田尻さんの質問にだけは、

自分の気持ちを隠すことなく、素直に答えることができた。



「……だって、死は誰にでも等しく訪れるよ」



静かに答えると、彼女はわたしの隣で、うーんとうなった。



「ごめん。頭では分かる気がするんだけど。

やっぱり、……よく分かんない」



そうだよね。

わたしが、「健康」ってものの素晴らしさを実感できないのと同じように、

田尻さんは、「死」ってものから、とても遠いところにいるのだと思う。



「わたしね、心臓が悪くて、今までに何回も死にかけてる」

「……うん」



彼女が、唇をキュッと引き結び、真顔になった。


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