13年目のやさしい願い
別れは、いくらでも、そこにあった。
死は、当然のように、そこに存在していた。
固まる彼女を安心させるように、わたしは続けた。
「元気になって、病気治して退院する子も、たくさんいるよ」
笑顔を向けると、彼女も「うん」と頷いた。
その表情はまだ固かったけど。
「でもね、近いか、遠いかの違いはあっても、誰にだって、死は等しく訪れるんだよ」
遠くグランドを走る人たちを見る。
先生を見る。
目を瞑って、背面の校舎を、
その中にいる無数の人の気配を感じる。
「その死が見えているか、見えていないかだけの違いだから」
強い風がビュンッと吹き抜けた。
髪が、風に乱れ飛ぶ。
目を開けると、隣で田尻さんも、短くカットした髪を押さえていた。
色づきかけた葉が、宙を舞っていた。