13年目のやさしい願い
え? なんで斎藤くんが?
「叶太くんが、休みだと、斎藤くんが出てくるんだ?」
田尻さんがおもしろそうに言った。
「ああ、いや、オレ、広瀬に頼まれたからさ」
カナ!
朝は、裏口で羽鳥先輩が待っていて、教室まで送ってくれた。
お昼休みには、しーちゃんが一ヶ谷くんを追い払った。
この上、斎藤くんまで!?
「ご、ごめんね。あの、大丈夫だから……」
慌てて謝ると、斎藤くんは真顔で言った。
「でも、牧村、さっきふらついてなかった?」
そんなところまで見てたの?
居たたまれなくなって、思わず、身体を小さくした。
「ち、違うの。……えっと、田尻さんと話してて、あの、わたし、考えごとしてて、それで………」
しどろもどろになって、説明をしようとすると、斎藤くんはニコッと笑った。
「そっか。うん、何ともないなら、いいんだ」
田尻さんが笑いながら、口を挟む。
「ほら、先生、こっち見てるよ。戻った戻った」
「じゃ、行くけど、何かあったら、声かけろよ?」
そう言うと、斎藤くんは軽く手を振り、グランドへと駆け戻った。