13年目のやさしい願い
斎藤くんの背中を見送り、
そのまま、ぼんやりとグランドを見ていると、しーちゃんと目が合った。
手を振ってくれたので、振り返したら、嬉しそうに笑ってくれた。
隣で、田尻さんがつぶやいた。
「やっぱり、叶太くんがいないと、調子出ない?」
「そ、そんなことないよ」
「じゃ、悩みごと?」
「え?」
「はじめてじゃん。牧村さんが、話してて、こんなに上の空なんて」
「ご、ごめんね」
「違う違う。責めてないから」
田尻さんは、わたしの目を見て言った。
「……心配してるの、これでも、一応」
それから、言ったばかりの台詞を、まるで言うんじゃなかったって後悔したかのように、怖い顔をして、視線を逸らした。