13年目のやさしい願い
12.退院と不安
「特に異常もないし、今日、退院していいわよ」
「よっしゃ!」
オレがグッと拳を握ると、ハルの母さん……オレの主治医の先生はクスッと笑った。
「念のため、2~3週後に診せに来てね」
「え? なんで?」
「出血があるといけないから」
「今、ないのに?」
「遅発性の出血……頭を打って、一ヶ月とか経ってから症状が出る事があるからね」
「へえ」
とオレが軽く答えると、おばさんはオレじゃなく、オレのお袋の方を見た。
「絶対とは言えないけどね、まず問題ないから大丈夫。
それに遅発性の出血は、症状が出てからの処置でも間に合うくらいだから」
……医者だ。
おばさんの白衣は見慣れていたし、医者だってのは、もちろん知っていた。
けど、実際に自分が診察してもらうのと、白衣着てるのを見るだけとはぜんぜん違う。