13年目のやさしい願い
「おばさん、医者だったんだね~」
思わず言うと、おばさんは不思議そうにオレの顔を見た。
「何を今さら?」
「いや、診察してもらったの始めてだったからさ」
横から見てるのと、自分が診察してもらうのとでは大違い……と続けようとしたら、お袋がたしなめるように、「叶太」とオレの名を呼んだ。
看護師さんも面白そうにオレを見ていた。
「大丈夫。患者さんとも普通に、おしゃべりすることあるし」
笑いながら、おばさんがお袋に言った。
「そう?」
「ま、でも、叶太くんと、何もここで雑談することはないわよね」
そう言うと、おばさんはオレの方に視線を戻した。
「おしゃべりは、家でしましょうか?」