13年目のやさしい願い


「あら、なんで制服なんて着てるの?」



3時前、家を出ようと一階に降たところで、お袋に呼び止められた。



「学校行ってくる」

「え? もう、授業終わりの時間よね?

って言うか、今日、お休みするって連絡してあるわよ?」

「ハル、迎えに行ってくる」

「……陽菜ちゃん、車でしょう?」



お袋が怪訝そうな顔をして、オレを見た。



大丈夫だよ。

頭打って、おかしくなった訳じゃないって。

……ま、そんなこと心配してないだろうけど。



「ハルんち行って、車に乗せてもらってくから」



お袋は呆れたように、オレを見た。



「やーね。たった一日休んだだけで。

陽菜ちゃんが帰ってくるの、待てないの?」



隣の家だ。

お袋が言うのも、ある意味もっとも。

だけど、



「待てないから、行くんだろ」



と、オレが言うと、お袋は「もう」とクスクス笑った。

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