13年目のやさしい願い
「ホント、あなたは感情表現がストレートね。晃太とは大違い」
「違うかな?」
兄貴の方が、オレなんかよりずっと深い付き合いしてそうだし、
ストレートに感情表現してそうだけど。
「ぜんぜん違うわよ」
「ふーん。そうかな?」
靴を履きながら、兄貴が彼女の腰を抱き親しげに歩いているところを思い浮かべる。
さすがに、あれは、オレ、できないよな。
大学4年の兄貴。
今の彼女は何人目だったっけ?
親父が催促するからって、兄貴、律儀に家に連れてくるんだもんな。
「……じゃ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。陽菜ちゃんによろしくね」
お袋は面白そうに笑いながら、玄関を飛び出すオレに手を振った。