13年目のやさしい願い
ゆっくりと、2人並んで廊下を歩く。
事故の前の金曜日までは、2人の間に流れていたのは妙に重苦しい空気。
今は以前のように、つないだ手のひらからは、暖かい思いが流れている気がする。
不幸中の幸いだった。
ハルを散々心配させたけど、たんこぶ1つでハルとの仲が元に戻ったのは、本当にラッキーだった。
「そうだ、ハル。
オレ、何かあったかって心配したんだぞ。ハル、メールの返事くれないんだもんな」
「え? したよ?」
「え? ホント?」
オレはスマホを取り出して、改めて新着確認をした。
けど、やっぱり届いていない。
「ほら」
と見せると、ハルは立ち止まった。
自分の携帯を取り出し開いて、「あっ」と小さい声を上げた。
「ごめんね。送れてなかった」