13年目のやさしい願い


「いや、オレもつきあいってもんが……」



苦笑する兄貴。

こりゃ、彼女とデートだな。

そうでもなきゃ、「かわいい弟」で、ぜったいに突っ込みが来るはずだ。



「たまには、いいじゃん? お袋だって、親父と水入らずで」



軽く言うと、兄貴がオレに冷たい視線を向けた。



「おまえな、親に心配かけて、その言いぐさはないぞ?」



兄貴、説教モード?



……でも、まあ、そうだよな。

笑い事じゃなかったんだよな、最初は、きっと。

兄貴が病室に飛び込んできた時の、切迫した声が脳裏に浮かぶ。



「……ごめん」



すぐには帰れない遠方で、息子の事故を知らされたオレの両親。

いくらCTの結果、異常がないって言われたって、意識がないって言われたら……。

そりゃ、相当、驚いただろうし心配したよな?


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