13年目のやさしい願い


「でもさ、今回の事故では、ハルが一番、ダメージ受けてるから」



オレの言葉に、兄貴は、



「……あ、そっか」



と、虚を突かれたような顔をした。



「ハルちゃんだけ、意識がないおまえに会ってるんだよな」

「そう」

「だけど、元気そうじゃなかった?」



……兄貴は、泣きじゃくるハルを見てないから。



泣きじゃくるハルどころか、

オレに抱きしめられて、赤い顔してたハルしか見てないから。



間が悪く、兄貴がオレを心配して病室に飛び込んできた瞬間、

ハルは、意識が戻ったオレに抱きしめられていた。



困ったような恥ずかしそうな顔をしたハルは、確かに、いつものハルと変わらないように見えたに違いない。

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