13年目のやさしい願い


「ハル、オレ、大丈夫だよ?」



オレが安心させようと、そう言っても、



「……ん。分かってるよ?」



ハルは、ただ静かにほほ笑みを返す。



最初、夕飯はもちろん家に帰って食べるつもりだった。

だけど、相変わらず、おばさんもおじさんも帰りは遅くて、ハルは一人。

給仕は沙代さんがするから、実際は一人ではないし会話もある。

だけど、お手伝いの沙代さんはハルと共に食事をとることはない。

だから、やっぱり実質、ハルは一人でいるようなもんだし、夕飯だって一人で食べるのとあまり変わらない。



ハルは、それに対して文句一つ言ったことはなかった。

ハルの兄さんが、大学に合格して家を出ることが決まった時も、「おめでとう」と嬉しそうに笑っていた。



今日もハルは笑顔を見せてくれた。



こんな時ですら、ハルは、「帰らないで」とは言わなかったけど、

だけど、



「また明日ね」



そう言うハルの目が、潤んでいるのに気づいてしまったから……。

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