13年目のやさしい願い
「ハル、おめでとう」
と、カナがわたしのグラスに、コツンと自分のグラスを当てた。
わたしのグラスにはオレンジジュース。
カナのグラスには……、
「ねえ、カナ、これなあに?」
「ふふふ。……ビール」
とカナが嬉しそうに言った。
「え? ダメでしょ?」
思わず言うと、カナは笑って答えた。
「ハルは生真面目だなぁ~。今時、高校生ならビールくらい……」
と、そこまで言ったところで、カナはふぅと小さくため息を吐いた。
わたし、相当怖い顔をしていたみたい。
「冗談だろ」
そうして、指で、コツンとわたしの頭を叩いて、
「ノンアルコールビール。……親父、うるさいんだよな、そういうとこ」
と笑った。
「ハルだって飲めるよ、これなら。……飲む?」
「……美味しいの?」
「どうだろうな?」
カナにグラスを渡されて、一口飲もうとして、思わず吹き出しそうになった。
なに、これ。
「あはは。ダメだった?」
「……変な味」
顔をしかめるわたしの頭を、子どもにするみたいによしよしとなでてから、カナは言った。
「早く、本物飲みたいな」
「……わたしは、いらないかも」
そう言うと、またカナは笑った。
お酒は二十歳から。
そんな言葉が、頭に思い浮かぶ。
お酒を飲める年まで、わたし、生きていられるんだろうか?