13年目のやさしい願い
「………あ。ごめんなさい」
慌ただしく今度は前を向き、先生の方を見た。
教卓に立っているのは、数学の先生。
「大丈夫か?」
先生の目には、怒りはなかった。
むしろ、その目の中に心配がかいま見えて、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
授業中にボーッとしていたのだから、叱られたっておかしくないのに……。
「大丈夫です。……あの、ごめんなさい、聞いてなくて。何番でしょうか?」
聞くと、隣の席の男の子が、自分の教科書をわたしの方に寄せて、指さしで教えてくれた。
わたしが開いていたページから、5ページも進んでいた。
ノートも真っ白。
だけど、……よかった。
予習してある。
答えると、先生は笑顔で「正解」と言ってくれた。