13年目のやさしい願い
授業が終わると、カナが飛んできた。
「ハル、大丈夫?」
「何が?」
笑顔で応えたのに、カナは心配そうに言った。
「さっき、当てられた時、授業、聞いてなかったんだろ? ハル……疲れた顔してるぞ」
つきあいの長いカナには、ぜんぶお見通しだ。
困った顔をしていると、カナはそっと頬に触れた。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「保健室行くか? それか、後一時間だし、早退する?」
わたしの「大丈夫」は、カナの耳には届いていない。
「……後、一時間だから、授業受けるよ?」
「ホントに大丈夫?」
こくりと頷いて、机に上半身を伏せた。
……疲れた。
そっか、顔にも出ちゃってるんだ。
「ハル!?」
「……次の授業まで、休憩」
「休憩って!? 保健室で寝よう?」
「イヤ」
カナが困ったように、わたしの背に手を置いた。
「ハル」
だって、もう動きたくない。
授業だって、休んでばっかりもイヤなんだよ……。
……疲れたな。
身体がって言うより、心が疲れた。
早く家のベッドで休みたいな。