13年目のやさしい願い
この子とカナの間に何があったかなんて、わたしは知らない。
そして、わたしが何を言ったって、カナから直接言われたんじゃなきゃ、この子はぜったいに諦めない。
……カナじゃなきゃ、断れない。
でも、カナと話す気なんて、この子にはない。
そうでなきゃ、わたしにカナと別れろなんて言わない。
カナに、わたしと別れてって言って、カナがOKすれば、それで済む話なのに、カナではなくわたしに言いに来たんだから……。
こんな思いは二度としたくない。
今日で、今で、終わりにしたい。
……カナ。
もし、この子が逃げたら追いかけられない。
わたしには、彼女を引き止める術がない。
反射的に、わたしは枕元に手を伸ばした。
手に触れた携帯電話のボタンを2つ、何も言わずに、後ろ手に押した。
そんなことが、
そんな小細工が、自分に出来るなんて思ったこともなかった。