13年目のやさしい願い
ケータイ、スマホは当然、授業中は禁止だったけど、今日に限って、オレは堂々と机の左上に乗せていた。
気づかなかった先生もいたけど、4時間目の英語教師は目ざとく気がついた。
「広瀬。スマホは鞄に入れておけ」
若い男の先生。
嫌みはなく、軽い注意。
どちらかと言えば、さわやかなタイプで人気のある先生だ。
「今日、保健室の先生、一日出張でいないんです」
「ん?」
「ハル、今、一人で寝てるから」
そう言うと、先生は教室をぐるっと見回して、ハルがいないのを確認した。
そうして、
「仕方ないな。……音は消しておけよ」
と苦笑い。
去年の派手な告白のおかげで、オレたちの仲は先生たちにまで、しっかりと浸透している。
ハルは嫌がるけど、はっきり言って、割と便利だ。
「消してあります! ありがとうございます!」
気合いの入ったオレの返事に、何人かが笑った。