13年目のやさしい願い
「ハル!?」
もう一度、呼んでみる。
やっぱり、返事はない。
「先生! オレ、保健室行ってきます!」
心臓がバクバク言っていた。
なんかの拍子に偶然押してしまったとか、あり得ない。
いや、もしそうだったとしても、何の問題もない。
むしろ、そうであった方がずっといい。
過去何度も目にした、発作に苦しむハルが、意識のないハルが、フラッシュバックのように、脳裏に浮かんでは消える。
「ああ、行ってこい。 ……一人で大丈夫か?」
前半を聞いただけで、オレはスマホを握りしめて走り出した。
教室を出る前、目の端に、志穂と斎藤と、もう一人の保健委員が立ち上がって何か話しているのが見えた。