13年目のやさしい願い
「……陽菜ちゃん、オレ」
一ヶ谷が何かを言おうとして、ハルを見つめた。
「これだけは、伝えさせて。オレ、さ、」
その瞬間、ハルが苦しそうに顔をゆがめた。
「……ごめん、一ヶ谷くん」
ハルは目をつむり、きゅっと身体を小さくして口元に手を当てた。
ハル!?
「……も、少し、話したかったけど。……ちょ…と、ムリそう」
「ハル!」
オレの声を合図に、成り行きを見守っていた志穂と斎藤も駆け寄ってきた。
ハルは、慌てて身体を支えたオレに、苦しそうにしがみついてきた。
ハルの呼吸はひどく荒く、顔色もひどく悪くて、その手は氷のように冷たかった。