13年目のやさしい願い
「ハル」
と、カナが桜に見とれるわたしを呼ぶ。
「なあに?」
桜の枝に手を伸ばして、カナが花を摘む。
それをわたしの髪に挿して、
「可愛い」
と一言。
カナがあんまりストレートに言うから、わたし、恥ずかしくて、頬がカッと熱くなる。
つきあい始めて、10ヶ月近く経つのに、わたしは相変わらず、この状況に慣れることができずにいた。
未だに、照れてしまうんだ。
カナと腕を組むことも、肩を抱かれることも、ましてや抱きしめられることなんて……。
そんなわたしを見て、カナはまた、
「ハル、可愛い」
と言って、わたしをそっと抱き寄せた。
ゆっくりとカナの顔が近づいてくる。
慌てて目を瞑ると、カナの唇が優しくおでこに触れた。
そのまま、頬にも。
そうして、頬を寄せた後に、そっと唇にも触れた。
「ハル」
カナはわたしを抱きしめて、言う。
「大好きだよ」