13年目のやさしい願い
今、裕也くんは約束通りに白衣を着て、病室にいた。
「雑音、聞こえた?」
そうして、あの時と同じ質問に真顔で答えてくれた。
「盛大に。……陽菜ちゃん、つらいだろ?」
「ん? 大丈夫」
「これで大丈夫なら、逆に問題だよ」
裕也くんは顔をしかめた。
確かに、熱いし息苦しいし、イヤな動悸もある。
身体は重くて、ベッドの上に起きあがるのもムリだと思うくらいだけど、それでも発作の時の苦しさからしたら、むしろ天国だとすら思う。
「……氷まくら、気持ちいいよ。ありがとう」
脈絡もなく、そう言うと、裕也くんは心配そうにわたしの頭をなでた。
「そう? それはよかった。じゃあ、脇も冷やそうか」
氷まくらの準備は、いつもなら看護師さんがしてくれる。
「なんで裕也くんが?」
「ああ。ナースの皆さん、忙しそうだったからね。陽菜ちゃんの様子も見たかったし、ついでに。……待ってて。用意してくるから」
そう言うと、裕也くんは足早に病室を後にした。