13年目のやさしい願い


「パパ、おかえりなさい」



スーツ姿のまま、ダイニングに入ってきたパパ。

立ち上がってパパの元へ向かった。

背が高くてハンサムで、仕事では厳しいらしいと聞くのに、ママに頭が上がらないパパ。

お兄ちゃんには、厳しいところもあるのに、わたしにはどんな時にも劇甘なパパ。

パパは、ギュッとわたしを抱きしめて、頭をぐりぐりとなで回した。



「陽菜、元気そうで良かった!」



海外暮らしが長かったパパは、愛情表現もとってもオープン。

ギュッと抱きしめてのハグも、頬にキスも、パパは普通にする。

小さい時からこんな風だったから、わたしも自然と、パパの背に手を回す。

パパには平気なのに、カナにできないのは、なんでだろう?

昼間、抱きしめられたことを思い出して、ふとそんなことを考えてしまう。



と、パパの口からカナの名前が出た。



「クラス、どうだった? ちゃんと叶太くんと同じクラスだったかい?」



わたしの肩を抱き、食卓へとエスコートしつつ、何気なく、本当に何気なく、パパの口から出た言葉。



爆弾発言

……ってのは、こんな風に突然落とされる。


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