13年目のやさしい願い
「裕也……くん」
「ん? どうした?」
話しながら、ベッドの上にいるはずの身体がどこまでも沈み込み、ずぶずぶと闇の中に入り込んでいくような錯覚におちいる。
「……のね、お願いが……あるの」
今、話さなきゃいけない気がしてならないのに、何だかろれつが回らなくなってきていた。
「ん? なに?」
「……たしが、……だ……と」
裕也くんが、額の汗をやさしくぬぐってくれた。
わたしが死んだ後、カナの話、聞いてあげて。
カナの力になってあげて。
そう言いたかったのだけど、もう、ちゃんと声が出ていたのかも分からなかった。
こんなこと、裕也くんにしか頼めない。
裕也くんが、何か言っているのは聞こえたけど、それが、「もう一回言って」なのか「分かった」なのか、「おやすみ」なのかも、もう分からなかった。
意味の取れない裕也くんの言葉を聞きながら、ゆっくりと、わたしの意識は闇に沈み、やがてプツリと途切れた。