13年目のやさしい願い
「ハル?」
ぼんやりしていると、カナに名を呼ばれた。
「なあに?」
「はい、プレゼント」
カナが嬉しそうに、細長い箱を差し出す。
深いローズピンクの包み紙に金色のリボン。
「ありがとう! 開けてもいい?」
「もちろん!」
そっとリボンをほどいて、破らないように丁寧に包装紙を取る。
ピンク色の細長い箱を開くと、キレイに編まれた華奢な鎖と、繊細な造りのアクアマリンのペンダントトップが現れた。
「可愛い! ありがとう、カナ」
お礼を言うと、カナは嬉しそうに笑った。
「つけてくれる?」
「うん」
わたしが、そう答えると、カナはペンダントに手を伸ばした。
「悩んだんだよね。何にしようか。気に入ってくれて、よかった」
カナは、わたしの後ろに回り、器用にペンダントをつけてくれた。
「似合う?」
「可愛い!」
カナはとろけそうな笑顔を見せると、わたしをギュウッと抱きしめた。
「ハル、おめでとう」
「あの、あのね、……カナ、みんないるのに、恥ずかしいよ」
「そうだぞ、叶太。オレの可愛い妹にむやみに触るな」
側で飲んでいたお兄ちゃんが、コツンと、カナの頭を叩いた。
一緒にいた晃太くん……カナのお兄さんも、隣で笑ってる。
「ダメ。いくら、明兄(あきにい)でも、ハルは渡さないよ?」
カナはわたしを抱きしめたまま言う。
それを聞いて、晃太くんがクスクス笑う。
「どうする、明仁(あきひと)?」
お兄ちゃんは、仕方ないなぁと言うようにふっと笑って、わたしの頭を小さい子にするみたいい、くしゃっとなでた。
「弟の不手際は、兄貴のせいだ。晃太、おまえが飲め」
そう言うと、ワインの瓶を手に取り、晃太くんにグラスを渡して、なみなみと注いだ。